われわれ精神保健福祉士は、個人としての尊厳を尊び、人と環境の関係を捉える視点を持ち、共生社会の実現をめざし、社会福祉学を基盤とする精神保健福祉士の価値・理論・実践をもって精神保健福祉の向上に努めるとともに、クライエントの社会的復権・権利擁護と福祉のための専門的・社会的活動を行う専門職としての資質の向上に努め、誠実に倫理綱領に基づく責務を担う。
この倫理綱領は、精神保健福祉士の倫理の原則および基準を示すことにより、以下の点を実現することを目的とする。
1.精神保健福祉士の専門職としての価値を示す
2.専門職としての価値に基づき実践する
3.クライエントおよび社会から信頼を得る
4.精神保健福祉士としての価値、倫理原則、倫理基準を遵守する
5.他の専門職や全てのソーシャルワーカーと連携する
6.すべての人が個人として尊重され、共に生きる社会の実現をめざす
(1)クライエントへの関わり
精神保健福祉士は、クライエントの基本的人権を尊重し、個人としての尊厳、法の下の平等、健康で文化的な生活を営む権利を擁護する。
(2)自己決定の尊重
精神保健福祉士は、クライエントの自己決定を尊重し、その自己実現に向けて援助する。
(3)プライバシーと秘密保持
精神保健福祉士は、クライエントのプライバシーを尊重し、その秘密を保持する。
(4)クライエントの批判に対する責務
精神保健福祉士は、クライエントの批判・評価を謙虚に受けとめ、改善する。
(5)一般的責務
精神保健福祉士は、不当な金品の授受に関与してはならない。また、クライエントの人格を傷つける行為をしてはならない。
(1)専門性の向上
精神保健福祉士は、専門職としての価値に基づき、理論と実践の向上に努める。
(2)専門職自律の責務
精神保健福祉士は同僚の業務を尊重するとともに、相互批判を通じて専門職としての自律性を高める。
(3)地位利用の禁止
精神保健福祉士は、職務の遂行にあたり、クライエントの利益を最優先し、自己の利益のためにその地位を利用してはならない。
(4)批判に関する責務
精神保健福祉士は、自己の業務に対する批判・評価を謙虚に受けとめ、専門性の向上に努める。
(5)連携の責務
精神保健福祉士は、他職種・他機関の専門性と価値を尊重し、連携・協働する。
精神保健福祉士は、所属機関がクライエントの社会的復権を目指した理念・目的に添って業務が遂行できるように努める。
精神保健福祉士は、人々の多様な価値を尊重し、福祉と平和のために、社会的・政治的・文化的活動を通し社会に貢献する。
(1)専門性の向上
a 精神保健福祉士は専門職としての価値・理論に基づく実践の向上に努め、継続的に研修や教育に参加しなければならない。
b スーパービジョンと教育指導に関する責務
1)精神保健福祉士はスーパービジョンを行う場合、自己の限界を認識し、専門職として利用できる最新の情報と知識に基づいた指導を行う。
2)精神保健福祉士は、専門職として利用できる最新の情報と知識に基づき学生等の教育や実習指導を積極的に行う。
3)精神保健福祉士は、スーパービジョンや学生等の教育・実習指導を行う場合、公正で適切な指導を行い、スーパーバイジーや学生等に対して差別・酷使・精神的・身体的・性的いやがらせ等人格を傷つける行為をしてはならない。
(2)専門職自律の責務
a 精神保健福祉士は、適切な調査研究、論議、責任ある相互批判、専門職組織活動への参加を通じて、専門職としての自律性を高める。
b 精神保健福祉士は、個人的問題のためにクライエントの援助や業務の遂行に支障をきたす場合には、同僚等に速やかに相談する。また、業務の遂行に支障をきたさないよう、自らの心身の健康に留意する。
(3)地位利用の禁止
精神保健福祉士は業務の遂行にあたりクライエントの利益を最優先し、自己の個人的・宗教的・政治的利益のために自己の地位を利用してはならない。また、専門職の立場を利用し、不正、搾取、ごまかしに参画してはならない。
(4)批判に関する責務
a 精神保健福祉士は、同僚の業務を尊重する。
b 精神保健福祉士は、自己の業務に関する批判・評価を謙虚に受けとめ、改善に努める。
c 精神保健福祉士は、他の精神保健福祉士の非倫理的行動を防止し、改善するよう適切な方法をとる。
(5)連携の責務
a 精神保健福祉士は、クライエントや地域社会の持つ力を尊重し、協働する。
b 精神保健福祉士は、クライエントや地域社会の福祉向上のため、他の専門職や他機関等と協働する。
c 精神保健福祉士は、所属する機関のソーシャルワーカーの業務について、点検・評価し同僚と協働し改善に努める。
d 精神保健福祉士は、職業的関係や立場を認識し、いかなる事情の下でも同僚または関係者への精神的・身体的・性的いやがらせ等人格を傷つける行為をしてはならない。
精神保健福祉士は、所属機関等が、クライエントの人権を尊重し、業務の改善や向上が必要な際には、機関に対して適切・妥当な方法・手段によって、提言できるように努め、改善を図る。
精神保健福祉士は、専門職としての価値・理論・実践をもって、地域および社会の活動に参画し、社会の変革と精神保健福祉の向上に貢献する。